日本国内・国外を問わず、老若男女に読まれている日本の漫画。
日本の漫画作品の画力はもちろんのこと、ストーリー性、そして内容の濃さと面白さは、誰もが認めるもので、それを象徴する様にエンターテイメントの世界では、漫画が原作の作品で溢れています。
その漫画家、特に少年漫画の作者に、ペンネームは男性名だけど、ご本人は女性という漫画家がいらっしゃるのをご存知ですか?
今回はそんな、「男性名を使っているけれど実は女性だった!」という少年漫画家を調べてみました。
男性名を使っているけど実は女性だった!少年マンガの作者は?
「え!あの漫画家さんも!?」
と思われる方が多いと思いますが、ペンネームに男性名を使用されている女性の漫画家さんは、意外と多いことがわかりました。
尼子 騒兵衛(あまこ そうべえ)
兵庫県尼崎市出身。
本人曰く、作品を投稿する際に締め切り間際にもかかわらず、ペンネームがまだ決まっていなかったため、尼崎市出身であることから、「騒々しい尼崎の子」という意味でつけた名前だそうです。
代表作「落第忍者乱太郎」
NHKのEテレで現在も放送されている、アニメ「忍たま乱太郎」の原作です。
このアニメは1993年4月から放送され、現在は22期目を放送している人気アニメになりました。舞台は室町時代末期。忍者の卵たち(忍たま)の修行や普段の生活を、ギャグを交えて愉快に描いている作品。ギャグの部分は子供たちにもわかりやすく、現代の時計や自動販売機なども出てきて楽しませてくれていますが、尼子先生の信念の元、子供の読者に歴史の事実を正しく伝えようと、歴史的資料や取材を基に正確な時代考証を行っているそうです。
2019年全65巻、完結となりました。
荒川 弘(あらかわ ひろむ)
北海道幕別町出身。
実家は酪農業を営んでいるそうです。
コミックスなどにも時々登場する荒川先生の自画像は、メガネをかけたホルスタイン種の乳牛で、丑年生まれのおうし座だということも掛けているそうです。
一男二女のお母さんです。
代表作「鋼の錬金術師」
「ハガレン」の呼び名で親しまれています。
19世紀の産業革命頃のヨーロッパをイメージしつつ、錬金術といものが存在するという架空の世界が物語の舞台となっています。
高名な錬金術師を父に持つエルリック兄弟が、錬金術の最大の禁忌である人体錬成で亡くなった母を蘇らせようとした結果、失敗し、兄のエドは左脚を、弟のアルは身体全てを失い、失意のどん底に落ちてしまいます。
そんな二人がさまざまなことを乗り越え、元の身体を取り戻すため旅に出る…というダーク・ファンタジー。
2010年全27巻、完結となりました。
一色 まこと(いっしき まこと)
1984年に「ヤングマガジン」の「カオリ」でデビュー以降、「週刊少年ジャンプ」や「モーニング」など、様々な青年誌で活躍されています。
代表作「ピアノの森」
複雑な家庭環境に育ち、小学生から風俗店の下働きをしている少年一ノ瀬海が主人公。森に捨てられた壊れたピアノをおもちゃ代わりにして育った海が、さまざまな出会いを経て天才ピアニストとして才能を開花し、世界に羽ばたくストーリーです。2007年にはアニメ映画化され、また2018年からはNHKでテレビアニメとして放送されました。
2015年全26巻、完結となりました。
大島 司(おおしま つかさ)
静岡県掛川市出身。
最初は少女漫画を描き、「なかよし」に投稿して入賞しましたが、アクションシーンを、どうしても入れてしまうなどのこだわりがあり、少年誌へ移ったそうです。
そして「週刊少年マガジン」の新人賞に投稿し、選外佳作を受賞しデビュー。
名前の由来は「少年誌の作者が女性だとわかると、それだけで読者に敬遠されると思ってペンネームを男性の名前にした」とのことです。
また、プロフィールなどで描く自画像も男性で、さらに自分を「ボク」と呼んでいたという徹底ぶりだったそうです。
代表作「シュート!」
高校サッカーを題材にしたこの作品がデビュー作です。
第一部から第四部までの長期連載でした。
主人公は田仲俊彦ですが、第四部では伊東宏という新たな主人公が登場するそうです。
白熱した試合シーンや力強い描写で、高校生のサッカーの世界が描かれていました。
1993年に「蒼き伝説 シュート!」というタイトルでテレビアニメ化され、翌年1994年にはなんとSAMPによって実写映画化されたそうです(^^)
その後、アニメ映画化もされました。
2003年全66巻、完結となりました。
久保 ミツロウ(くぼ みつろう)
長崎県佐世保市出身。
当初は本名の「久保 美津子(くぼ みつこ)」で女性誌に執筆していたそうですが、掲載予定だった雑誌が廃刊になるという不運に見舞われました。
しかし、その元編集者から「週刊少年マガジン」での執筆を依頼され、「3.3.7ビョーシ!!」が連載されることになりました。
これが久保先生の少年誌デビュー作品で、この時からペンネームを「久保ミツロウ」に変更したそうです。
代表作「モテキ」
「人類、必読。心に刺さる恋物語。」というキャッチフレーズで、2008年から2010年まで「イブニング」で連載されました。
各話のタイトルは、実際のアーティストの楽曲名になっていたそうです。
ちなみに第1話が「格好悪いふられ方」(大江千里)でした。
TVドラマ化や映画化もされ、2010年の新語・流行語大賞に「モテキ」がノミネートされました(^^)
2010年全4.5巻、完結となりました。
こちら、映画版↓
こちらはドラマ版↓
吾峠 呼世晴(ごとうげ こよはる)
福岡県出身。
国内を一躍「鬼滅の刃」ブームにした作者も実は女性だったのですね!
吾峠先生が週刊少年ジャンプに漫画を送るきっかけは、「銀魂」ファンだったことからだそうです。
また、自画像がメガネをかけたワニであるため、ファンの間からは「ワニ先生」の愛称で呼ばれています。
代表作「鬼滅の刃」
大正時代を舞台に、主人公の竈門 炭治郎(かまど たんじろう)が鬼に家族を殺され、さらに鬼になってしまった妹を人間に戻す方法を探すため戦うというストーリーです。
キャッチフレーズの「これは、日本一慈しい(やさしい)鬼退治。」も注目を集めました。
吾峠先生がデビュー前に新人漫画賞で佳作を受賞した作品、「過狩り狩り」が「鬼滅の刃」の前身的な作品だそうです。
2016年2月から連載がスタートし、人気絶頂の中、2020年5月に終了したのは記憶に新しいですね。
2020年全20巻、完結となりました。
さとう ふみや
埼玉県大宮市出身。
1991年に週刊少年マガジンでデビューし、驚いたことにその翌年には「金田一少年の事件簿」の連載を始めたということです。
本名は「佐藤 文子(さとう ふみこ)」で、男性風のペンネームは少年誌の漫画家であることを考慮して、当時の編集部の方で考えられた名前と言われています。
代表作「金田一少年の事件簿」
原作・原案が天樹 征丸さん、金成 陽三郎さんで、作画さとう ふみやさんという、本格的推理漫画です。
主人公は名探偵金田一 耕助を祖父に持つ、高校生の金田一 一(きんだいち はじめ)。
幼馴染の七瀬美雪と剣持勇警部、明智 健悟警視らと共に、遭遇する難事件を解決していくストーリー。
テレビドラマ化、映画化、アニメ化と次々とメディア展開して人気を博しました。
2018年からは青年誌「イブニング」で、しがないサラリーマンになった金田一少年の20年後を描いた「金田一37歳の事件簿」が連載されています。
2017年全70巻、完結となりました。(「金田一少年の事件簿」本編)
「金田一少年の事件簿」のドラマといえば、堂本剛さん主演のイメージがつよいですね。
しかし、嵐の松本潤さん主演の「金田一少年の事件簿」もあります!
田辺 イエロウ(たなべ いえろう)
東京都出身。
2002年に「少年サンデー特別増刊R」にて、「LOST PRINCESS」でデビューされました。
当時のペンネームは、田辺 伊衛郎(たなべ いえろう)だったそうです。
代表作「結界師」
400年続く妖退治の結界師一族の後継者、高校生の墨村 良守(すみむら よしもり)が主人公。
隣に住む、雪村 時音(ゆきむら ときね)と共に、私立烏森学園に集まってくる妖を退治していく。
2011年全35巻、完結となりました。
中村 光(なかむら ひかる)
静岡県伊豆市出身。
2001年、16歳のときに『海里の陶』で「月刊ガンガンWING」でデビューされました。
2004年には「ヤングガンガン」で「荒川アンダーザブリッジ」を連載し、アニメ化、テレビドラマ化、映画化され一躍人気漫画家となりました。
声優の神谷浩史さんと結婚されています。
代表作「聖☆おにいさん」
目覚めた人ブッダと神の子イエスが、下界でのバカンスを過ごすべく、日本の東京は立川市でアパート暮らしをする日常を描いたコメディです。
倹約家のブッダと衝動買いをしがちなイエス、天界の天使たちと下界のアパートの大家さんやご近所さんとの日々の様子が、ギャグやユーモアを散りばめて描かれています。
日本人ならではの感覚の漫画で、外国ではウケるどころか怒られるのではないかと思っていましたが、なんと「イエスとブッダ」というタイトルでフランスで翻訳されているそうです。
さらに驚いたことに、2011年にはあのイギリスの大英博物館に展示されていたこともあるそうです!
2020年5月現在、18巻まで刊行されています。
樋口 大輔(ひぐち だいすけ)
群馬県出身。
1992年に「イタル」で「週刊少年ジャンプ増刊Spring Special」にてデビューされました。
当時は女性の名前のペンネームで描かれていたそうです。
そして1998年に週刊少年ジャンプでの「ホイッスル!」連載開始から、「樋口大輔」に変更したそうです。
代表作「ホイッスル!」
風祭 将(かざまつり しょう)を主人公とした、サッカー漫画作品です。
将来の夢はJリーガーになることである主人公が、仲間やライバルと出会い、様々な経験を重ねながらサッカー選手としてだけでなく人間としても成長していく物語です。
2002年全24巻、完結となりました。
星野 桂(ほしの かつら)
滋賀県出身。
アニメーターとして活躍したのち、2004年「週刊少年ジャンプ」にて「D.Gray-man」を連載スタートしました。
2006年にはテレビアニメ化されました。
病気やケガなどで長期休載があり、その後移籍をして、現在は「ジャンプSQ.RISE」で連載されています。
代表作「D.Gray-man」
女性名で活動する少年漫画の女性作家は?
もちろん、女性名のままで、少年漫画家として活動する女性漫画家さんもいらっしゃいます。
羽海野 チカ(うみの ちか)
東京都足立区出身。
漫画家になる夢を持ちながら、株式会社サンリオに入社し、退職後フリーのイラストやグッズデザイナーをしていたそうです、
その間も同人誌活動を続けながら漫画家への道を目指し、「CUTiE Comic」にて「ハチミツとクローバー」でデビューされました。
ペンネームの由来は過去に書かれた作品「海の近くの遊園地」から、「ウミノチカク・・・ウミノチカ」となり「羽海野チカ」になったそうです。
代表作「3月のライオン」
中学生でプロ棋士としてデビューした主人公・桐山 零(きりやま れい)。
零は日々の生活の中でも、盤上の上でも深い孤独の中にいました。
そんな零がとある3姉妹と出会い、心の内に温かさを取り戻して行き、零だけではなく様々な人たちが、何かを取り戻して行く物語です。
2020年6月現在、15巻まで刊行されています。
漆原 友紀(うるしばら ゆき)
山口県出身。
吉山 友紀のペンネームで投稿を始めて、志摩 冬青(しま そよご)のペンネームで活動されていました。
その後、現在のペンネーム漆原友紀で「蟲師」を投稿し、アフタヌーン四季賞の四季大賞を受賞され、デビューとなったそうです。
代表作「蟲師(むしし)」
動物でも植物でもない生命を「蟲」と呼びます。
それは、時にヒトに影響を及ぼしたり、奇妙な現象を起こすいわゆる妖怪に近い存在のようです。
「蟲」自体に意思があるのではなく、自然現象的な生命体なのでした。
蟲師として全国を旅する主人公は「ギンコ」という男性。
蟲師とは、普通の人には出来ない蟲を見ることができ、蟲に関わる様々な問題から人々を助けることを生業とします。
そんなギンコが蟲とヒトを共生へと導いていく物語です。
2008年全10巻、完結となりました。
加藤 和恵(かとう かずえ)
東京都出身。
19歳の時に手塚賞の準入選し、「赤マルジャンプ」に掲載されたそうです。
その後は、同人誌活動で活躍。
2005年に創刊された「月刊少年シリウス」で本格的にデビュー。
2009年からは「ジャンプSQ」にて、「青の祓魔師」を連載開始しました。
「青の祓魔師」はその後、テレビアニメ化や劇場版アニメ化される人気作品となりました。
代表作「青の祓魔師」
奥村 燐(おくむら りん)という悪魔の血をひく少年と、その双子の弟で祓魔師の奥村 雪男(おくむら ゆきお)が、仲間と共に父の仇であるサタンを倒すため戦うダークファンタジー。
2020年6月現在、25巻まで刊行されています。
河下 水希(かわした みずき)
静岡県出身。
子供の頃から漫画家やイラストレーターになるのが夢だったそうです。
しかし、一度は一般企業に就職し、その後に漫画家になったそうです。
「桃栗 みかん(ももくり みかん)」のペンネームで、同人誌活動後、「ぶ~け」など少女漫画誌で活躍されました。
その後、少年誌である「週刊少年ジャンプ」で活動することを機に、ペンネームを河下 水希に変更されました。
代表作「いちご100%」
中学3年生の真中淳平が主人公のラブコメディ。
ある日、屋上で偶然出会った「いちごパンツ」の美少女に一目惚れした淳平。
その女の子の手掛かりは落ちていたノートに書かれていた「東城 綾」という名前でした。
その東城 綾を探していくうちに、「西野つかさ」と交際することに…。
中学から高校生へと、真中淳平と美少女たちのお色気ありのラブコメディです。
2005年全19巻、完結となりました。
高橋 留美子(たかはし るみこ)
新潟県新潟市出身。
少年漫画界での女性漫画家の草分け的存在で、漫画好きの人なら知らない人はいない大御所です。
その高橋留美子が描く作品の、独特の世界観は「るーみっくわーるど」と称されています。
1978年に「勝手なやつら」でデビュー後、「うる星やつら」「めぞん一刻」「らんま1/2」
「犬夜叉」「1ポンドの福音」「境界のRINNE」など代表作は多数あります。
代表作「めぞん一刻」
「一刻館」というアパートの管理人である若い未亡人の「音無 響子」と、住人のひとり「五大 裕作」のラブコメディ。
一癖も二癖もある「一刻館」の住人達や、五大裕作の恋のライバル「三鷹 瞬」など個性的で愛すべきキャラクターたちとの、コミカルな中にホロリとさせる物語はまさに「るーみっくわーるど」です。
恋愛漫画の金字塔と言われる作品です。
1987年全15巻、完結となりました。
女性作家が男性名を名乗る理由は?なぜ?
女性作家が男性名を名乗るのは、やはり少年漫画を描く上で女性が描くことへの偏見が大きいのだと思います。
今でこそ、高橋留美子先生たち女性漫画家による少年漫画での実績が認められて、偏見は少なくなりましたが、以前は編集者自体が作家の実力は認めつつも、女性が描く少年漫画は読者が敬遠するという理由でペンネームを変えさせていたのも事実です。
他にも、漫画家が型にはまらない、自由で個性的なペンネームを考えるようになった結果ということもあると思います。
男性名を使っているけど実は女性だった!少年マンガの作者は? まとめ
今回、男性名のペンネームで少年誌を描かれている女性漫画家を調べてみましたが、想像以上に多くいらっしゃいました。
作品も多彩で、楽しませてくれるものばかりでした(^^)
男性だから男性漫画、女性だから女性漫画という括りは、読者自体が読むにあたってあまり関係ないことなのかもしれません。
しかし、作品がヒットして、初めてその作者が注目されるので、今後も男性名で活動する女性少年漫画家も、まだまだ、でてくるのではないかと思います。
コメント